OBのインタビュー記事

2022/03/07 21:21

取材日:2020年11月

今回の流経大柏OBインタビューは、20期卒の金澤怜氏です。金澤氏は大人気タオルブランドhippopotamus(ヒポポタマス)を展開する株式会社HPSの取締役として活躍されています。 
 
流経大柏サッカー部を卒団し、多様な経験を積んだ金澤氏の軌跡と現在の活動、今後の展開に関するお話は、現役高校生にも非常に参考になると思います。 

流経柏を選んだ理由を教えてください

柏イーグルス出身なので、先輩が沢山通っていたというのが一つの理由でした。先輩と同じ道を選択しました。Jの下部組織ではなく、高校でサッカーをやりたいというのも理由の一つでしたね。 

流経柏以外、例えば市立船橋なども選択肢の中にありましたか?

そうですね。柏レイソル、ジェフユナイテッド千葉の下部組織はもちろん、市立船橋高校も。自分と同じ歳で柏イーグルスから市立船橋高校に進学した仲間も多かったです。レイソルに進んだ人もいましたね。 

柏イーグルスから流経柏に進学してきた人達は、先輩の話を聞く機会があったり、他の人達より近くで見ていますよね?当時の流経は、厳しいが代名詞だったと思いますが、、 

 中学校まではクラブチームなので、あまり走ったりしていませんでした。「流経柏に行くと、とんでもなく走らされるよ」と言われていました。だけど、僕自身はその話をあまり現実的に捉えていませんでした。「まあ大丈夫だろう。大した事無いでしょ」って。すぐにトップに上がれると思っていたのですが、それが結構な間違いでした(笑) 

入部してからはどのように感じていましたか? 

 印象的だったのは、入学前に練習会に参加した時です。1学年上の人達が普通にゲームを行なっていたんですが「うわ、めちゃくちゃ上手いな。レベルが違う」って感じたのを覚えています。 

入学してからの3年間は、どんなモチベーションで取り組んでましたか?

高校1、2年生の時はモチベーションがすごく高かったです。高校2年生の最後まで、プロというのを強く意識していました。サッカーしかやる事がなかったので、しっかり向き合ってやってましたね。高校2年生は試合に出ていたのもあったので、1番楽しかったです。 
 
でも、高校3年生の時に色々上手くいかない事も溜まってきて、モチベーションが上がらなくなってしまいました。もう良いやみたいな(笑) 
 
「試合に出してください」って言ってチャンスをもらって結果も残したんですけど、翌週またメンバーから外れてしまって……。高校3年生の夏くらいには、結果と比例しない選手選びに疲れ切ってしまいました。今思えば、選手選考には様々な要因が絡みますから、結果を出したとは言え、今後の将来性など様々なことを踏まえて外されたんだろうなとは思いますが。 
 

卒業後は、どんな道に進みましたか? 

 最初は都内の飲食店でアルバイトをしていました。卒業後芸能活動がしたかったので、バイトしながら専門学校に通いつつ、ライブ活動やモデルなど走り回って動いていました。その時に某芸能関係者の方との出会いがあり、事務所系列の飲食店でアルバイトしながらツアーの手伝いをしたりしていました。大体2、3年くらいそういう生活をしていましたね。 
 
 結果的にその期間は朝から晩までひたすら働いていて、自分の活動はほとんど出来ていませんでした。笑 
 

ご自身でも芸能活動をやられていたんですか?

 そうです。僕自身も芸能活動をしていました。アルバイトも自分のスケジュールで入れていたので、芸能の仕事が入る時はそっちに行ってみたいな感じです。ただ、声をかけて貰って手伝いを始めてから舞台背景を知っていくうちに、自分がフロントマンとして活動するよりも、ライブを作りあげたり、事業を作っていく側に魅力を感じるようになってしまいました。そんな葛藤もある中で、現在の株式会社HPSと出会いました。 

何歳くらいの時ですか?

 22歳になる前くらいですね。元々芸能を始めたのも遅かったので、21、22歳までに売れなかったら辞めようと思っていました。 

株式会社HPSには、どんな経緯で入社することになりましたか?

働いていた飲食店のお客さんに「見た目が悪そう、お金稼ぐのが好きそうだよね」と言った感じで、弄られるようになりました。そのお客さんと仲良くなって色々話していくうちに、今の会社の代表を紹介して貰うことになりました。その時がちょうどhippopotamusのスタートアップの時期で、僕を入れて3人しか居ない小さな会社でしたね。その時同時に、西麻布にバーもオープンしていたので、そのバーでもアルバイトしてました。 

そこで一緒にやっていこうと思ったきっかけは何ですか?

 当時22、23歳くらいでしたが、社長の考え方や、見た目、会社経営の今後の目標や可能性などを聞いた際、その時に考えてた時の僕の理想だったんですよね。 

一緒にやり始めてみてどうでしたか? 

 今までの経験から、小売店や百貨店、ホテルなどタオルの販売先などがポンポン浮かびました。会社の人数が少ない分、やっていなかったことが多く、やるべき事がやれていない印象でした。そういう背景もあったので、スタートは上手くいきましたね。 
 
 できていた商品も素晴らしく商品力も高かったので。その後、アパレルがライフスタイルに向いていた年でもありました。どういう事かというと、洋服屋には洋服しか置いてありませんでしたが、徐々に雑貨も置くようになってきた。その波に上手く乗る事も出来、バンバン取引先が決まり、右肩上がりに売上も向上しました。 

どのように販売ルートを増やしていったのですか?

 最初に行ったのは百貨店ですね。その次にアパレルのセレクトショップ、家具屋、雑貨店、ホテルという感じで増やしていきました。商品がタオルなので、百貨店が主でしたね。 

最初から取締役という役職だったんですか?

 最初は何の肩書もありませんでした。普通の営業マンです。なので、僕自身が商品を置きたいなと思うお店に実際に足を運んで、少しうろちょろした後に「実は僕タオル屋なんですけど、hippopotamusって知ってますか?」って感じで話を始めていく。実はこの手法で10社から30社くらいは決めたと思います。 
 
 オーナーがいる店舗ならオーナー、大手ならバイヤーを仕留めればその系列全てに広められるなとか、そういった事は何となくですが、計算しながらやっていました。それが世の中の流れもあって、凄く上手く行きました。 
 
 今は10年目なので、ひと通り広め終わって、次はもっと海外含め、戦略的に売り上げをとっていかなければいけない時期に入っていますね。 
 

話を聞くと順調そうですが、上手くいかなかった時期や挫折などはありますか? 

正直常に問題はあるので、そこまで悩んだり、挫折した事はありません。ただ、強いていうなら時代がオンラインに切り替わったり、時代の流れが早いので、ブランドという物をどう作り上げていくのかは常に頭が痛くなるほど考えてます。

今は現場では無く、管理職という事で、ある種経営者目線になるわけですよね?そこで感じる事はありますか?

 抽象的な表現になりますが、サッカーをしていた頃を振り返っても、ビジネスの現場においても、モチベーションを高く保つことは大切だなと思います。僕のいうモチベーションは気合とかやる気では無く、問題を解く能力に長けているかという部分です。 

 
 問題が起きた時に、自力で乗り越えられる答えを見つけられるかが大切だと思います。結果的にこの場合、スキルが必要になるわけでモチベーションが高い人間はこのスキルを持ち合わせているな。と思います。 
 
 特に僕は、その大切さを社会人になってから学びました。もし、高校生の頃にそこに気がついていれば、もっとサッカーでも上を目指せたのかな?と後悔しています。 

サッカー部という集団生活の中で、『自力で乗り越えられる力』はどのようにすれば身に付くと思いますか? 

 今思い返してみると自主練の時間も多くありましたし、例えば掃除の時間。当時は言われたからやっていましたが、当番制を思いついていれば、その分練習時間に充てることも出来ましたよね?先ほど話したやる気に紐づく話だと思います。

もうひとつ言えば、流経柏はリーダーが少ないなと思っています。 

というと? 

チームのキャプテンと応援団長が居たくらいしか記憶にないんですよね。でも、ゲームキャプテンの他にも自主練習を取り仕切るリーダーがいたり、フィジカルを考えるリーダーが居たりとか、色々なリーダーがいることで誰かに頼りっきりになるのでは無く、上手く回るのかなと思いますね。 

なるほど。会社を担う立場に身に置くことで気がつくことも多かったんですね。

会社の話に戻りますが、この先どういった事を展開していこうと考えていますか? 

 
hippopotamusはタオル事業というよりは、HERMESのように何年も続くブランドをにしたいという想いがあります。ブランドは価格の戦略が自由、ブランドを確立する事で無限のサービスや商売をする事が可能になります。ブランド事業はコモディティ化といわれる経済において、とても重要だと考えています。 

ブランドとして価値を高めて行きたいという事ですね。ブランド力を高めるために、拘っている事はありますか?

 「モノ」に拘るということです。商品開発の部分でも、プロフェッショナルに拘って商品を作り上げる。そのほか、マーケティング的な戦略は山ほどありますが説明しきれないです。笑 

来年の具体的な目標はありますか?

 タオル屋っていうとイメージは地味ですが、オンラインでも販売できるし、百貨店やお洒落なセレクトショップにも置いていただけます。さらには生地として洋服も作れます。ホテルとも仕事ができます。海外とも取引ができます。某有名カーメーカーとも一緒に仕事ができていて、可能性が無限にあるので面白みを感じています。 

 
 なので、もう少し日本国内でのシェアを増やしていき、アジアからスタートして、ゆくゆくはアメリカ、ヨーロッパなどの海外にも広めていけたらいいと思っていますね。来年の目標は海外進出です。 

ありがとうございます。会社の目指すところをお伺いしましたが、金澤さんのビジネスにおけるスタンスもお聞きしたいと思います。現在「モノ」を売るという事を中心にやられていますが、その中で自分か大切にしていることはありますか? 

 

 今現在はインターネットも発達していて検索したらすぐに欲しいものは見つかりますし、良い物もたくさん世の中に存在しています。そうなると比較の時代に入っており値段を比べたり、品質を比べたり、購入経路を比べたりして購入する方が多いと時代です。 

 
 その中で、勝つには、共感や体験、ポジションを移す事これが購買意欲を掻き立てると思うので、そういった部分は意識して、クリエイティブ制作から物つくりまで考えています。 

以前お話をお伺いした時に、社会貢献活動にも興味があると仰られていましたよね?

 スターバックスの社長の動画の影響です(笑)。貧しい国にスターバックスを作ることでそこにコミュニティが生まれる。そのビフォーアフターの動画を見た時に、自分では珍しいくらいに感動を受けてしまったんですよね。それがきっかけで、自分の会社でもそういった取り組みができないかなというのは考えています。 

それは、ビジネスの発展を目的としたCSRからの側面なのか、自分自身の心の充実のためですか?

 両方ですかね……。30歳を超えてきてからは、後者の方を考えることも多いです。ビジネスの発展や事業として成り立たせる事はもちろんですが、本当に自分自身がやりたい事を取り組んでいかないと長くは続かないですし100%の能力を発揮できないと思うので、やりたいと思うことをビジネスにする。これが重要だと思います。 

 
 また、僕個人としては、株式会社HPSの取締役として働きながら、今年、自分が代表として別会社も立ち上げました。その理由は、自分自身の考えてるビジネスモデルがどこまで世の中で価値を見出せるのか挑戦する為です。それと、変化に強くどの環境でも楽しく働けるチームを作りたいです。 
 
 これからの時代は、貧富の差が広がりビジネスの世界では更に厳しい環境になります。その中で生き抜くには圧倒的な行動力とスキルが必要です。そのあたりを鍛えるためにも、起業し頭に描いているものをいち早く形にしていきたいと考えています。 
 
hippopotamus(ヒポポタマス)のHP
https://hippopotamus.co.jp/ 
 
【ライター】
五十嵐メイ
https://mobile.twitter.com/me1mei0502 
 
【編集】
流経大柏サッカー部OB会